いまから書くこと
・辞書の上の「メタバース」・VR=人工現実感(「現実」とは)
・共通言語としての『スノウ・クラッシュ』
・ブロックチェーンとメタバース
辞書の上の「メタバース」
「メタバースの定義が曖昧」?本当にそうでしょうか。
辞書は引きましたか?
「Metaverse」は90年代からある言葉で、オックスフォード英語辞典にも載っています。
[Computing] a virtual-reality space in which users can interact with a computer-generated environment and other users.つまり、コンピュータで作った多人数参加型のバーチャルリアリティ空間のことです
辞書に載っている程度には一般化している言葉です。
Twitterを日時指定で「メタバース」と検索しても、これ以外の使い方が出てくるのはせいぜいここ2年程度からというのがわかると思います。
VR=人工現実感(「現実」とは)
バーチャルリアリティ(VR)は俗に「仮想現実」と訳されてしまうのですが、学術的には「人工現実感」と訳します(最近は「実質現実感」とも)。
ここで重要なのは、バーチャルとリアルは対義語ではないということです。
バーチャルリアリティのことは「あたかも現実のような」や「実質的に現実と同じ」と読み替えると理解しやすいと思います。
では、「現実」とはなんでしょうか。
現実とは五感のセンサを脳が処理して認識する体験のことです。
「人工現実感」は、現実を模しているかどうかということではなく、脳が現実だと思うかどうかがポイントになります。
ここはわたしの意見も入りますが、脳が「あたかも現実のような」「実質的に現実と同じ」と思うのであれば、現実を模す必要はありません。
(なお、現実を複製することに重きをおくものとしては「デジタルツイン」という概念があります)
人工現実感はどうやって作るのでしょうか。
これは「入力インターフェース」「シミュレーションシステム」「出力インターフェース」の3つの要素で構成できます。
・入力インターフェース
手足や頭を動かす、などの動作を入力する装置です。
「人工現実感」は、現実を模しているかどうかということではなく、脳が現実だと思うかどうかがポイントになります。
ここはわたしの意見も入りますが、脳が「あたかも現実のような」「実質的に現実と同じ」と思うのであれば、現実を模す必要はありません。
(なお、現実を複製することに重きをおくものとしては「デジタルツイン」という概念があります)
人工現実感はどうやって作るのでしょうか。
これは「入力インターフェース」「シミュレーションシステム」「出力インターフェース」の3つの要素で構成できます。
・入力インターフェース
手足や頭を動かす、などの動作を入力する装置です。
・シミュレーションシステム
入力された動作による人工現実への干渉を計算する装置です。
・出力インターフェース
シミュレーションの結果を感覚器に提示する装置です。
たとえば、
①コントローラで手をふる(入力)
↓
②手を振った結果をPCで計算(シミュレーション)
↓
③自分が手を振っている様子がHMDに表示される(出力)
といった具合です。
この入出力のサイクルを繰り返し続けて、それに違和感を生じさせないのが優れた人工現実感ということになります。
そして、メタバースの場合は先述のとおり「多人数参加型」なので、複数の入出力が同時にシミュレーションされます。
人工現実感の中で、自分自身や第三者から見て実質的にその人がその人そのものと思える状況ができれば、メタバースであると言えるのではないでしょうか。
『VRChat』をはじめとするVRSNSは不完全ながらもメタバースを実現していると言えると思います。
よくVRSNSは「なりたい自分になれる」と言われますが、個人的にはどちらかというと「もうひとつの本当の自分になれる」のではないかと思います。
個人には多面性があり、たとえば友人に見せる自分と目上の人に見せる自分は違う振る舞いをすると思いますが、どちらも自分です。
現実の姿とアバターの姿に大きく差異があっても、それが実質的なその人そのものであればメタバースは成立します。
現状のVRSNSでは嗅覚・味覚・力触覚・温度感覚などが未実装または実用に達していません。しかし、わたしとしては研究開発が進めばよりレベルの高いメタバースができると信じています。
シミュレーションの結果を感覚器に提示する装置です。
たとえば、
①コントローラで手をふる(入力)
↓
②手を振った結果をPCで計算(シミュレーション)
↓
③自分が手を振っている様子がHMDに表示される(出力)
といった具合です。
この入出力のサイクルを繰り返し続けて、それに違和感を生じさせないのが優れた人工現実感ということになります。
そして、メタバースの場合は先述のとおり「多人数参加型」なので、複数の入出力が同時にシミュレーションされます。
人工現実感の中で、自分自身や第三者から見て実質的にその人がその人そのものと思える状況ができれば、メタバースであると言えるのではないでしょうか。
『VRChat』をはじめとするVRSNSは不完全ながらもメタバースを実現していると言えると思います。
よくVRSNSは「なりたい自分になれる」と言われますが、個人的にはどちらかというと「もうひとつの本当の自分になれる」のではないかと思います。
個人には多面性があり、たとえば友人に見せる自分と目上の人に見せる自分は違う振る舞いをすると思いますが、どちらも自分です。
現実の姿とアバターの姿に大きく差異があっても、それが実質的なその人そのものであればメタバースは成立します。
現状のVRSNSでは嗅覚・味覚・力触覚・温度感覚などが未実装または実用に達していません。しかし、わたしとしては研究開発が進めばよりレベルの高いメタバースができると信じています。
なぜいま『スノウ・クラッシュ』なのか
1992年にニール・スティーヴンスンによって書かれた、ポスト・サイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』がなぜいまふたたび注目されているのでしょうか。それは「Metaverse(邦訳:メタヴァース)」という言葉を発明しはじめて使ったから、ではありません。
『Second Life』のLinden Lab創業者(現戦略アドバイザー)フィリップ・ローズデール、OculusVR創業者パルマー・ラッキー、同(現Meta社所属)チーフサイエンティストのマイケル・アブラッシュ、いずれも『スノウ・クラッシュ』が自身に影響を及ぼしたと公言しているからです。
つまり、コンピュータでもう一つの世界を作ったり、バーチャルリアリティのデバイスを作ったりしている人たちの共通言語として『スノウ・クラッシュ』があるということです。
冒頭で示したように「Metaverse」が辞書に載るくらいには。
ブロックチェーンとメタバース
さて、ここまでの説明でブロックチェーン(暗号通貨やNFTなど)はメタバースの必須要素でないことはおわかりいただけたと思います。『The Sandbox』や『Decentraland』のようなプロジェクトは「ブロックチェーンを使ってメタバースを構築する試み」であって、「メタバースにはブロックチェーンが必要」ということではありません。順序が逆です。
いままで勘違いしていた方はこの機会にしっかりと認識を正していただきたいです。
おわりに
「メタバース」は俗語ではありますがバズワードではありません。すでに長く使われている言葉の意味を歪めるのは健全な議論の妨げになります。勝手にバズワードにしないでくださいね。